クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない
(あの時に聞いた彼女の恋は、成就してしまったのか)

 徐々に胸が締めつけられ、これが失恋の痛みなのだと自覚する。上司として彼女に接すると決めたのに、未練だらけな自分にため息をこほしそうになる。

 その時ミーティングルームの扉ががちゃりと開いた。不動が町田店長とともにやってきたのだ。
 彼女は智田に気づくと、素早くこちらへとやってくる。

(俺は、彼女の上司だ)

 そう自分に言い聞かせ、なんでもないふりをしていつものように彼女と対面した。

「準備できている。よろしく頼む」

 不動は彼女らしく、スムーズに全体ミーティングを進め、やがて終えた。

(こういう場でも滞りなく進めることができるのは、彼女がしっかりと準備をしてきたからだろう)

 抜かりない彼女らしい。そんな思いで彼女を見ると、目が合った。胸が高鳴りそうになったが、慌てて上司という仮面を被る。

 労いの意味も込めて彼女に小さく頷くと、彼女は小さく微笑み返してくれた。
 だがすぐに、その視線をふいっと逸らされてしまう。胸がちくりと痛んだが、自分はあくまで上司なんだと言い聞かせた。

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