クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない
あっという間に梅雨が明け、不動の店舗の売場改変当日。蝉時雨を聞きながら起床し、今日の段取りを頭に描く。
(午前中は本部と今日のすり合わせ、開店後に不動の店舗で検索用端末の運び込み。不動との打ち合わせもできたらしたい)
ここまで彼女は万全に準備をしてきた。いまさら確認することなんてないかもしれないが、彼女が力を入れてきた企画案だ。最後まで、しっかりサポートをしたい。
そんなことを思いながら、自宅でネット会議の準備をする。
だが、予定がすっかり変わってしまった。ベテラン店長である町田店長から、電話がかかってきたのだ。
『不動店長の店、大丈夫ですかね? 伸縮パンツの在庫かき集めようとしてますけど』
そんなこと、寝耳に水だ。
確認する、と彼に礼を告げ電話を切る。立ち上げていたパソコンで不動の店の在庫を確認すると、トドラー用伸縮パンツの在庫数が予定よりも明らかに少ないことにすぐ気がついた。
発注ミスだろうか。
本商品は、売場改変の目玉商品だ。周りの店舗から在庫をかき集めても、圧倒的に足りない。
智田はすぐさま自分のスマホに目を移す。だがそのロック画面に、彼女からの着信の知らせはない。
(こんな時まで、周りのことを考えているのか)
彼女は常に周囲の人のことを考え、最善を尽くして動く。きっと彼女には、他の業務がある智田を頼るという選択肢がないのだろう。