クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない
(だか、俺が上司だ。彼女のために、俺が動かなくてどうする)

 智田は開いていたパソコンを閉じ、鞄に放り込む。本部に打ち合わせキャンセルの電話をすると同時に、リュックを背負い部屋を出た。
 自分を頼って欲しい。自分は、彼女の上司なのだから。

 彼女の店舗に向かうなら普段は歩きだが、智田は車に乗り込んだ。車のほうが、歩くより何倍も早い。休日の大きな買い物時にしか使わない自家用車のエンジンをかけ、彼女の店舗へと急ぐ。

 彼女の店舗につくやいなやスタッフルームに飛び込んだが、そこはひっそりとしていた。急いで売場へ向かう。

(なんだ、これは)

 彼女の店舗らしからぬ、商品補充の追いついていない状態。これでは開店することができない。
 慌てて店頭にいたベテランスタッフに声をかけた。彼女は段ボールを取りに行く時間が惜しいと言うから、慌てて段ボールを取りにバックヤードへ向かった。

 それからは不動の部下である真霜と人員配置を仕切り直し、なんとかいつもの状態でのオープンに漕ぎつける。
 不動から事情を聴くと、案の定トドラー用伸縮パンツの発注ミスのせいだった。

「不動店長の現状は分かっている、町田店長に聞いた。なぜ俺に相談しない?」

 まるで責めるような言い方になってしまった。感情がこんなに言葉に乗ってしまったのは初めてだ。だが、彼女は冷静に答える。

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