クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない
 渋滞を抜け、急ぎつつも安全運転を心がけ、彼女の店舗へと戻ってくる。閉店時間は過ぎており、ショッピングモールの看板の明かりは既に消えていた。
 もう、売場改変が始まっているということだ。

 焦る気持ちで搬入口へと車を止める。車を降り、駐車許可と搬入する旨を守衛に伝えた。彼は快く対応してくれたが、台車の位置はよくわからないようだった。

「智田SV、ですよね」

 聞き慣れぬ青年の声に振り返る。

「君は……」

 見覚えがあるが、誰だったろう。

「プレブロ南湘南店、配送担当の結木です。荷物、運ぶんですよね? 手伝います」

 彼はそう言うと、どこからか台車を持ってきて智田の車の後ろに回った。

「いいのか? 業務外だろう。そもそも、どうして君がここに?」
「恋人のピンチを黙って見てるのができないだけです。結局心配しながら待ってることしかできなかったんですけど、智田さんが見えて、俺の出番だって思いました」

 結木は爽やかな笑顔でそう言いながら、軽やかに荷物を台車へと運んで行く。

「これ、プレブロに持っていきますね。どの辺りに置けばいいですか?」
「あ、ああ。店頭に持って行ってくれると、ありがたい」
「分かりました。残りは頼みます!」

 彼はそう言うと、驚く守衛さんを「俺です、俺。いつもお世話になってます」で押し通し、そのまま通路の奥へと行ってしまった。

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