クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない
「恋人のピンチに駆けつける、か」

 彼の言葉を繰り返すと、胸に嫌ななにかが押し寄せてくる。

(もしかして、不動の恋人って――)

 胸に押し寄せたものの正体は嫉妬だと分かったが、同時に彼女を心配して待っているなんて、なんて恋人思いなのだろうと感心してしまう。

(しかも、『俺の出番だ』って。かっこよすぎるだろう、彼)

 恋人のピンチに颯爽と現れる彼氏。まるでスーパーヒーローだ。
 自分はそんなに真っ直ぐに不動に想いを向けられていたかと思い返すと、反省ばかりが胸に浮かぶ。

(いや、今そんな反省をしている場合ではない。とにかく、店舗にこれを届けなくては)

 智田は残りの段ボールを台車に乗せ、急いで店舗へと向かった。

 だが、店頭に着く前に見てしまったのは、笑い合う結木と不動の姿だった。ほんのりと頬を赤らめる結木に、笑顔で頭を下げる不動。それで、結木はさらに照れたように手を首元に当てる。

(ああ、やっぱりそうだったのか)

 落胆と嫉妬が胸を襲うが、今は上司としての責務を果たさなくてはと段ボールを運ぶ。

 不動は智田に気がつくと、すぐにこちらに駆けて来る。

「よかった、本当に……。ありがとうございました」

 そう言う不動は、ほんのりと目尻を濡らしていた。商品がすべて届いたことへの安堵に起因しているのだろう。そうだと分かっていても、ぐっとくるものがある。

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