クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない
(上司としてではあるが、彼女のこんな顔を見られてよかった)

 智田は不安の中頑張って売場を作り続けてくれていた彼女をねぎらうように、そっとその顔に笑みを浮かべる。

「不動店長、ここからだ。売場、きちんと作り上げよう」

 そんな自分の言葉に強く頷く彼女を見て、自分の仕事はこれであり、それでいいんだと言い聞かせる。それから、スタッフたちとともに売場作りに奔走した。

 無事作業が終わり、退店を促される。智田も車を搬入口に駐車しっぱなしであるし、夜間作業は別に申請が必要なためここで退店しなければならない。
 出る間際に不動に声をかけようかと思ったが、彼女は他店の店長たちから話しかけられている。自分は後日でもいいだろう、とにかく車を動かさなければと店を出た。

 車に乗り込み、近くのパーキングへと移動させる。搬入口からほど近いここからは、従業員出入口も見える。
 少し休憩してから帰ろう。そう思い、運転席でそっと目を瞑った。

 だが、閉じた瞼に映し出されたのは、幸せそうに笑い合う不動と結木の様子だった。

 明らかに自分とはタイプの異なる、笑顔の爽やかな好青年。優しそうで、力も頼りがいもある。なにより、恋人を思いやる気持ちがとても素晴らしい。
 自分には勝ち目などない。だったら、ここは彼女を好きだった人として、彼女の幸せを願うべきだろう。

 納得いかない嫉妬と悔しさにそう言い聞かせ、瞑ったまぶたに力を込める。

 自分にはもう金輪際、恋のチャンスはやってこないかもしれない。だとしても、それでいい。ドジを直せなかった自分が悪い。

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