クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない

 じんわりと汗をかいていることに気付いて、智田は目を覚ました。
 少しだけ休憩するつもりだったが、すっかり眠ってしまったようだ。それほど、体は疲れていたらしい。

 ぐっと伸びをして、運転席から外へ出た。駐車料金を払って、帰宅する。それだけのことなのに、智田は足を止めてしまった。
 ショッピングモールの従業員出入口に、親しげに話すふたつの影を見つけてしまったのだ。

(不動と……やはり、結木か)

 守衛室の明かりに照らされた彼女の顔は、心なしか優しい気がする。結木も楽しそうに顔を綻ばせていた。
 だが次の瞬間、不動が急に顔を赤らめ慌てだす。結木はそれを見て、なぜか嬉しそうに笑っていた。

(俺に見せない顔ができるのは、やはり恋人の前だからなのだろうな)

 智田はため息をこぼしながら、深夜の駐車場でひとり駐車料金を払う。それから、重たい気持ちとともに自宅へと車を走らせた。


 想い人の幸せを願っていたはずなのに、いざ自分でない男が彼女を幸せにしている。その事実を目の当たりにしたとき、失恋以上にこたえるのだと知った、その翌日のこと。
 智田はいつも通りに仕事へと向かっていた。

 今日は不動の店舗の、モデル店舗としてのオープン日だ。同時に、他店も秋冬ものの展開が始まる。そのため、自分の統括下の店舗の状況を把握してから、不動の店に向かう。

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