クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない
(できる彼女には、癒しの恋人、か……)

 そんな訳のわからぬ思考につため息をこぼし、いや今日はモデル店舗オープンのめでたい日なのだからため息なんてついていてはダメだと背筋を正す。
 すると、目線の先に仲の良いカップルが歩いているのに気づいた。

(待て、あれは……結木と、不動の部下の真霜じゃないか!)

 カップルじゃないかもしれない、と思ったが、手のつなぎ方がカップルのそれでしかない。指を絡めたそれは友人のものとは思えないし、そもそも異性の友人同士が手を繋ぐことなどあり得るのだろうか。

 不動のことを思って彼女のために動く彼に感心したのは、つい昨夜のこと。頬を染めはにかみあう不動と結木に幸せになれと願ってから、まだ二十四時間も経っていない。

(あの男は、とんでもないやつかもしれない)

 不動がこのまま、あの男と付き合い続けたら――。

 そんなことあってはいけないと、智田は足を速めた。だが、ふと立ち止まる。
 ここで〝ただの上司〟がでしゃばるのは違うのではないか。これは、プライベートの問題だ。

 ――それでも。

(不動の幸せを願うと決めた。俺は上司である前に、彼女を好いているひとりの男なんだ)

 智田は再び足を動かし、彼女の店舗へと急いで向かった。

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