クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない
 プレブロの店頭は、思ったよりも多くの家族連れでにぎわっていた。ママ友というやつだろうか、ベビーカーを押す女性が多い。
 リニューアルオープンを謳った店頭で風船を配る法被姿のスタッフを横目に、智田は店舗奥へと急いだ。

 早足のまま、スタッフルームへと入る。一瞬空気がひりついたような気がしたが、智田は構わず風船を手にしていたスタッフに声をかけた。

「不動店長はどこにいる?」
「ミーティングルームで、風船とノベルティの確認をしていると思い――」

 スタッフが緊張した声でそう言う。だが、その語尾は消えていった。スタッフが言い切る前に、智田がスタッフルームを出て行ってしまったのだ。

 慌ててやって来たミーティングルーム。不動はひとり、段ボールに入ったノベルティの数を数えていた。
 彼女は扉の音に気づいたのか、こちらを振り返る。

「智田SV、すみません。時間よりもお早い到着だったので、まだ報告の準備が――」

 彼女は慌てて段ボールを閉じ、テーブルの上を開けようとした。だが、智田はそんな彼女の前に歩み出る。

「おせっかいだとは分かっている、上司として、立ち入るべきでないことも分かっている。だが、ひとつだけ言わせてくれ。あいつと付き合うのは、辞めたほうがいい」

 すると不動は智田の目の前で、目をしばたたかせる。そんな不動の様子に、智田は苛立ちながら再び口を開いた。

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