クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない
 朝礼を終え、店舗はオープンを迎える。今日は人気キャラクターとのコラボ商品発売日とあって、開店とともにやってくる客が多い。
 それでも、目立った混乱はない。スタッフが売場を完璧に仕上げてくれたおかげだろう。

 私は売場を真霜に任せ、さっそく智田SVとともに売場を回ることにした。
 顧客の邪魔にならないよう、バインダーを手に売場改変の話をしながら店内を歩く。すると、様々な問題点が浮き彫りになった。

「続きは裏で話そう」
「はい」

 智田SVの声に頷き、彼とともにスタッフルームへと戻った。ミーティングルームに行くには、ここを経由するのが早い。

「店長、凄いですね! モデル店舗だなんて」

 スタッフルームに入ると、休憩中のアルバイトスタッフがさっそく声をかけてきた。智田SVがオープン前の朝礼で、当店がモデル店舗になることをスタッフに話したのだ。

 だが彼女は、私の後ろに現れた智田SVを見て急に口を噤む。私は苦笑いを浮かべながら、彼女の肩を軽く叩いた。

「皆が頑張ってくれているおかげだよ」

 そう言うも、彼女はどこか居心地悪そうに肩をすくめる。

「いつもありがとう」

 私はそう言い、智田SVを振り向いた。彼はロッカーから鞄を取り出し、ミーティングルームへ向かう準備をしている。

(昨日のような顔を皆にも見せてくれたら、親しみやすいと思うんだけど)

 ふとそう思ったが、このクールさが彼らしさであるのも事実だ。

(そもそも、男性は女性に〝かわいい〟なんて思われたくないよね)

 そう思い直し、彼のドジは胸の内に秘めることにした。

< 15 / 206 >

この作品をシェア

pagetop