クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない
 ミーティングルームに入るとすぐ、智田SVは椅子に腰掛けながら言った。

「まずはキッズ・ベビーの什器の配列について。現状三列だが、ベビーカーがすれ違える幅を考えると店頭だけでも二列にしたほうがいいかもしれないな」

 什器とは、商品を並べる陳列棚のことだ。キャスターがついており、組み替えたり動かしたりできる。

「そうですね。実際、隣の店もベビーカーのお客様が多かったですし」

 言いながら、私は売場改変案の内容をもう一度思い出した。

 私のアイディアは、現在は店内奥に展開されているベビー・キッズ用品を店頭に展開するというものだ。
 隣のテナントであるベビー用品店から引き続きお客さんに足に運んでもらえるよう、売場を大きく組み替えるのだ。

 先ほど彼と売場を回った時、午前十時という時間にもかかわらずベビーカーを押しベビー用品店に入ってゆくファミリーを何組も見た。
 いつもは赤ちゃんの泣き声が聞こえるのを微笑ましく思っていたが、あの客層が買い物をしやすい売場を作るとなると改善案はまだまだ出てきそうだ。

 それからも、彼と検討事項を話し合ってゆく。メンズとレディースの店頭展開の割合について、もとのキッズ・ベビー売場にはどの商品を展開させるか――。

「今日のようなコラボ商品の発売時は、大人向けの在庫はどう展開する?」

 不意に智田SVにそう聞かれたが、その質問は想定済みだ。

「そういう場合は、店内の通路脇にひな壇を設置してそこで展開しようと思います」

 ひな壇というのはその名の通りひな壇型の陳列棚のことだ。ひな壇に展開した商品は目に付きやすく、顧客への訴求力がある。
 だが、智田SVは私の提案に難しい顔をした。

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