クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない
 時代とともに人々のライフスタイルは変わってゆくし、立地によって必要とされるものも異なる。だから、プレブロで顧客に最高の買い物をしてもらうには、時代や場所に併せた売場を作る必要があると思う。
 それを本部で吟味して、各地域のニーズにあったプレブロを作りたい。

(そう思っていたのに、今さら本当に本部に行きたいのかどうか、迷うなんて)

 そんなことを考えている間に、田辺さん親子は店頭にあった伸縮パンツを手に取り、「どれが好き?」と商品を選び始めた。
 二歳の子のこの記憶は大人になるまで残らないかもしれないけれど、彼にもここで素敵な買い物体験をして欲しいと思う。

「どうぞ、ゆっくりと買い物を楽しんで」

 買い物かごを手渡しながらそう言うと、田辺さんは手にしていた伸縮パンツをそこにいれ、籠を受け取ってくれた。

「そうさせてもらうね。不動さんの作った売場、しかと見学させていただきます」

 彼女は私に言いながら笑みを向け、息子と手を繋ぎ店内へと入ってゆく。

(田辺さんも、私は現場の人って思ってるよね。本当の私は、どうしたいんだろう)

 田辺さん一家は楽しそうに買い物を続ける。その姿に、私は複雑な気持ちで背を向けた。

< 153 / 206 >

この作品をシェア

pagetop