クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない
「さっきの話ってそういうことですよね? え、ふたりはお付き合いされてるんですか?」
「え、まあ、そうね。付き合って、います……」

 語尾にかけて、どんどん声が小さくなってしまった。恋の話を振られるのは、慣れていない。

 真霜はくすりと笑うと椅子の背もたれに背を預け、気の抜けたような声で言った。

「でも、なんか安心しました。発注も私のミスじゃなかったわけですし」

 だが、次の瞬間にははっと背を正す。

「あ、でもこれで安心していたらダメですね。私がパソコンをきちんと閉じていれば、こんなことにはならなかったんですから。……私の管理の甘さですね」

 彼女は言いながらしゅんとしていたが、私は驚いていた。

 彼女はいつの間にか、気持ちの切り替えが早くなったようだ。茉寛さんの話で私が動揺している間に自分の問題点を見つけ出し、改善策を考えている。

(真霜はこんなに頼もしくなった。なのに、申し訳ないな。彼女の憧れの店長が、心の内で迷ってるなんて)

「あ、後でなれそめ聞かせてくださいよ。ラーメンと一緒に!」

 真霜はそう言うと、私の肩をぽんと叩く。その発言にどきりとしながら、私は迷いを悟られぬよう彼女に笑みを向けた。

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