クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない
 智田SVは私の差し出したカタログをじっと見る。だがすぐ、パソコンを操作し始めてしまった。
 しかし、彼はそのまま口を開く。

「他店との比較だけでなく、モデル店舗としてどうすべきかまで考えている。やはり、不動店長は流石だな」

 思わず胸が波打ってしまった。彼の頬が、わずかに綻んでいるように見えたのだ。
 慌てて心の内でかぶりを振って、胸に芽生えかけたものを振り切る。するとその間に、彼はいつもの表情に戻ってしまった。

「展開場所さえ決まれば、入荷量の調整ができる。店頭のキッズ・ベビー商品については検討事項だが、仮にこんな感じでどうだろう?」

 彼はそう言うと、パソコン画面を私に向けてくれた。表示されているのは売場改変後の売場展開図だ。

 店頭のひな壇には、先ほど私が言ったベビー向けパジャマやトドラー用のパンツが展開されている。壁面には私が書いた売場改変案の通り、ガールズとボーイズそれぞれのアウターやボトムスが展開されていた。
 彼の作った図は、まるで私の頭の中を可視化したよう。

(すごい、今の時間でこれを……)

 思わず画面をじっと見つめていると、彼は小さな声で言った。

「おおよそのレイアウト図は売場改変案を読みながら作っておいたんだが、今の話し合いで少し動かしたんだ」

 智田SVはマルチタスクが上手い人らしい。

(本当にすごい人)

 私は手元のバインダーをちらりと見た。この赤字も、彼が様々な計算をして入れてくれたのだろう。
 私はこの売場改変案を書くきっかけとなったあの日のことを、ふと思い出した。

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