クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない
『店舗を良くしたいという姿勢が見える。提案書を書いて出してみないか?』

 私が隣のベビー用品店と売場を連動させるべきだと言ったあの日、彼はすぐさまこう言ってくれた。あの時私は、彼となら理想への一歩を踏み出せると思った。

 売上を伸ばすだけでなく、顧客に満足や思い出も持って帰ってほしい。どのプレブロでもその店舗に合った接客と売場で、素敵な買い物体験をしてほしい。
 これが、私が本部へ行きたい一番の理由であり、この改変案に込めた思いだ。

 私の提案には、大きな人員や予算が伴う。それでも私は顧客層やスタッフたちへの聞き取りから、この売場改変をすれば顧客の買い物のしやすさが格段に上がると見込んでいし、付随して売上も上がると見込んでいた。

 とはいうものの、私は全国に約五百店あるプレブロの、一介の店長にすぎない。智田SVのバックアップがなければ、提出には至らなかったと思う。

「キッズ・ベビーの店頭展開商品については、本部に相談しようと思う。貴店の売上上位品と類似店舗の売上上位品を比べてから、本決定を出してもらおう」

 彼は言いながら、パソコンの画面を自分の方へ戻した。

「メンズ・ウィメンズとの兼ね合いは、俺も対策を考える。他に気になる点はあるか? 要望でもいい」

 淡々と続ける彼の言葉に、ふと違和感が胸を過ぎる。

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