クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない
「改変案を提案した時は、ただ単純に里咲の洞察力が優れているだけだと思っていた。だが里咲には、売場に対してそういう思いがあったんだな」
「はい……」

 彼の言葉に、徐々に頬が熱くなる。
 心の内を隠して仕事に挑んでいたつもりだが、どうやら売場に対しては気持ちが乗っていたらしい。茉寛さんの言葉に、改めて自分の売場に対する想いの大きさを思い知る。

「里咲の売場に対する熱い思いと広い視野は、本部に必要なものだと思う。もとより、里咲は本部の指示に違和感を覚えて以前のSVや俺に進言していたんだろう?」

 私はこくりと頷いた。彼の言う通りだ。
 指示書通りの売場よりも、もっといい売場が作れると思ったから進言していた。
 彼に売場改変案を書くことを提案された時なにが嬉しかったのかというと、この売場を自分ならどうするか考えてやってみろと言われたような気がしたからだ。

「売場改変案を提出し実際にモデル店舗を作り出した実績もある里咲だから、本部に推薦もしやすい。むしろその考えを広めるために、本部への異動は好ましいと思う」

 淡々とした、だけど冷静な声色。だからこそ、彼の言葉はダイレクトに私の胸に響いた。
 今までうじうじと考えていたことが嘘みたいに、そっと背中を押された気がした。

 だが、続けられた彼の言葉を、私は思い切り遮ってしまった。

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