クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない
「どの店も同じ基準で店舗運営ができるようにという気持ちで、俺はこの仕事をしてきた。だから里咲のあの提案は、俺の中では革新的だったんだ。同じ基準以上に、その店舗の特異性に寄り添う店舗運営のありかたを考えるなんて。最初は正直やれるならやってみろと思っていたが、それでも里咲はくらいついてきただろう」

 彼の言葉に、売場改変案の作成をしていた日々を思い出す。
 確かに、茉寛さんは厳しかったかもしれない。だけど私は、これが通れば私の思う売場を作れるのだと夢中だった。

「そんな姿を見ていたら、君の作る店舗はきっと顧客第一の、新しいプレブロの形になると思った。だから、応援したいんだ。里咲の、その思いを」

 彼の言葉に再び涙がこみ上げて、目頭を熱くする。

「あなたと出会えて、私、本当に良かったです」

 素直な気持ちが口からこぼれ出てしまう。恥ずかしくて慌ててコーヒーを口に運んだ。

「それは、俺も同じだ」

 続けられた彼の優しい言葉に、またうるっとしてしまう。なんとか涙をのみ込み、洟をすすった。苦いはずのコーヒーが、しょっぱい。

 私は深呼吸をして、気持ちを落ち着かせる。
 しばらくして茉寛さんを見ると、彼はなにか思案するように眉根を寄せていた。

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