クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない
「どうしたんですか?」

 難しい顔の彼に、ついそう聞いてしまう。彼ははっとしてこちらを見た。

「いや、大したことではないんだが……以前SOUTH RIVERに行った帰り道も、里咲は暗い顔をしていたなと思い出していた。あの時から、このことを考えていたのか?」
「ああ、あの時は……」

 脳裏に蘇る、あの日の記憶。あの時、私は恋に浮かれているのが自分だけで寂しかった。

(『もう少し恋人らしくいたかった』って、言ってしまえばいいのだけれど)

 それは伝えてもいいのだろうか。
 仕事のことならまだしも、プライベートなことだ。心の奥底の想いを露わにして、彼がそれを迷惑だとは思わないだろうか。嫌われてしまったらどうしよう。

 頭に過るのは、高校時代の苦い思い出だ。ありのままの自分で接していたら、告白する前にフラれてしまった。
 茉寛さんは彼とは違う。だけど、あんな思いはもうしたくない。

 そんな私の気持ちとは裏腹に、茉寛さんは口ごもる私にそっと言う。

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