クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない
「俺は恋愛に疎い。友人に言われないと気づけない、情けない男なんだ。だから、なんでも言ってくれたら助かる。迷惑だなんて絶対に思わないから、なんでも伝えてくれ」

 そんな彼は、言葉の最後でこちらを見る。その表情に、胸がどきりと跳ねた。

(どうしよう、かわいい。さっきまで、すごくかっこよかったのに)

 不安そうに瞳を揺らす彼は、まるで大型犬のよう。
 だがそれでも、あの日のことを口にするのに引け目を感じてしまう。

 しばらく黙っていたが、懇願するような瞳でじっとこちらを見つめる茉寛さんに、私はついに観念して口を開いた。

「あの時は、恋人だって浮かれているのが私だけみたいで、少し寂しかったんです。次の日はお互い休みだったから、私てっきり――」

 言いながら、どうしても恥ずかしくなり最後まで言えなくなってしまう。火照った顔を隠すように、私はコーヒーを口に運んだ。
 カップの縁から覗き見た彼は、きょとんとしたまま固まっている。

「ごめんなさい、こんなこと言われても困りますよね。茉寛さんとの距離はこのままでも十分だって思って――」

 彼は私の言葉を遮った。まるで、弁解するように。

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