クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない
「いや、違う。困ったわけじゃないんだ。まず、あの時俺は里咲に嫌われたくなくて、浮かれているのを必死に隠していた」

 彼はそう言うと、恥ずかしそうに続ける。

「帰り際も、あの時はまだ早いというか、そういうことはもっと仲を深めてからと思っていた。だが、そうか、里咲は……」

 そこまで言って、彼は言葉を止めてしまう。そんな彼は、頬をほんのりと染めていた。そんな彼を見ていると、こちらまで再び顔が熱くなる。

「ありがとう。気持ちがとても嬉しい」

 彼は狼狽えながらもそう言うと、赤い顔のままこちらに笑みを向けてくれた。そんな必死な姿が、どうしようもなく愛おしい。

「その……もしかして今も、もう少し一緒にいたいと思ってくれているか?」

 私はこくりと頷く。胸の高鳴りと期待のせいで、ぎこちない動きになってしまった。


 彼に連れられ夕方の道を歩く。やって来たのは、茉寛さんのマンションだった。玄関に入ると、以前ここに来たあの日がフラッシュバックする。
 だが今日は、あの日とは違う。おかしいほどに高鳴る胸が、あの日の続きを予感させる。

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