クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない
 背後で扉が閉まる。本当にふたりきりになってしまったのだと、それで余計に意識した。
 つい靴も脱がずに立ち止まってしまうと、少し前にいた茉寛さんがこちらを振り向いた。

「キスを、してもいいか?」

 唐突な申し出に、胸がひときわ大きく鳴る。だが、彼の恥じらいながらもこちらを愛おしそうに見つめる瞳に、抗えるわけもない。

 こくり。小さく頷くと、茉寛さんは私の顎をそっとすくい上げ、優しく唇を合わせてくれた。
 人生で初めてのキス。温かくてむず痒くて、離れてほしいけど離れてほしくない。

 彼と恋人なのだと改めて確認するように、長く長く唇を押し合う。唇から全身に広がる喜びが、彼に愛されているのだと伝えてくる。

(ああ、どうしよう。幸せすぎて、泣きそう……)

 永遠に酔っていたい甘い甘いキス。
 だが、それは唐突に終わりを迎えた。

 ――カチッ、というスイッチの音とともに、視界が急に明るくなったのだ。

 いつの間にか瞑っていた目を開くと同時に、彼の唇が離れてゆく。
 彼は壁を見て、ため息とともに額に手を置いた。

「すまない、雰囲気が台無しだ」

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