クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない
 彼の背にちらりと見えたのは、照明のスイッチだ。どうやら、彼の肘がそれを押してしまったらしい。
 俯きがちにこちらを見る彼の頬は、ほんのりと赤い。心なしか目も赤みを帯びていて、その顔に胸が騒ぐ。

(やっぱり、かわいい……!)

「いえ」

 言いながら、つい頬が緩んでしまった。それに気づいて、慌てて表情筋を引き締める。
 すると、茉寛さんはぽつりと言った。

「前から思っていたんだが、里咲は俺のドジや勘違いに幻滅しないのか?」
「するわけないですよ、むしろ……」

 言いかけて、はっと口を噤んだ。〝かわいい〟だけは、言ってはいけない。
 だけど、茉寛さんは目の前で、私をじっと見てくる。

「むしろ……?」

 その顔は困惑したように揺れていた。

「なんでも言ってくれ。俺は里咲の言ったことはなんでも、迷惑だなんて思わない。先ほどもそう伝えただろう」
「でも……」

 脳裏に過去の嫌な記憶が戻ってくる。彼の顔はもう覚えていないけれど、友人とお付き合いをしながらも私を見つめる視線だけが強烈に頭に蘇る。
 再び口ごもってしまうと、彼は私を見つめたまま言った。

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