クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない
「よく来られるんですか? このお店」
「いや、そういうわけでもない。が、この店は好きだ」

 智田SVはそう言うと、少しだけ口角を緩めた。どうやら、リラックスしているらしい。そんな彼の様子に、私もついくすりと笑みをもらす。
 すぐにビールが運ばれてきて、私たちは売場改変案の成功を願って乾杯した。

「ありがとうございました。色々と、お手伝い頂いて」

 私は改めて、智田SVに頭を下げた。

「売場改変案が採用されたのも、モデル店舗になることが決まったのも、智田SVのご指導のおかげです。私ひとりでは、どうすることもできませんでした」

 私は言いながら、頭を上げた。
 ビールをたしなむ彼はなかなかレアだ。ガラスのチューリップグラスを握る大きな手が、様になっている。

「部下をサポートするのが、上司の役割だろう」

 彼は淡々とそう言う。

「でも、私の意見を汲んでくれるSVって今まで出会ったことがなかったので。現場のことを粛々とこなすのが店長の仕事だろうと思っていたので、お声をかけていただけて嬉しかったです」

 今まで口にしてこなかった感謝を伝えると、彼はグラスを置いてこちらを見た。

「そうか、よかった。実は、提案をしておきながら迷惑だったのではないかと何度も自問していた。不動店長は、あまり感情を顔に出さないだろう」

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