クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない
「こういうの、お好きなんですか?」
「はい。ピリっと刺激のあるが好きなんですよね」
「お口にあって良かったです。この店、元々大衆居酒屋だったんで、こういうメニューが残ってるんですよ。もしよろしければ、他のもどうぞ。〆のラーメンやお茶漬けなんかもありますので」

 彼は言いながら、智田SVの席の前にたこわさを置く。

「ラーメンもあるんですか?」

 つい聞き返してしまうと、彼はにこっと人懐っこい笑みを浮かべた。

「はい。実は裏人気メニューなんですよ」

 彼はそう言うと、戻ってきた智田SVと入れ替わるようにカウンターへ戻ってしまった。

 それから、智田SVとは他愛もない話をして過ごした。
 努めて、冷静に。彼のドジを思い出し胸が鳴ってしまいそうになるのを、何度も小さく深呼吸してこらえながら。


 智田SVは帰り際、配車アプリでタクシーを手配してくれた。そこまで遅い時間でもないが、家の方向がまるで違うからと私の夜道を心配してくれたのだ。

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