クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない
智田は転勤族の親のせいで、幼い頃から二年という短いスパンで転校を繰り返していた。その土地に馴染め始めたと思う頃には、毎回転校が待っている。
誰かと馴れ合うよりも、ひとりでいた方が悲しい思いをしなくて済む。幼い日の智田は、誰かと打ち解けるよりも流されるように生きることを望んだ。
そのせいか、ひとりきりでいることに慣れてしまった。茅野のように気さくに話しかけてくれる友人もいたが、それはごく少数だ。自分から友人を作らない智田は、いつの間にか他人との距離の縮め方が分からなくなってしまっていた。
(俺も全国転勤の仕事に就いたし、執着心などないと思っていた。だが、彼女とはこれからも仕事をしたいと思ったんだよな。だからあの提案を――)
彼女に売場改変の提案書を書く指導をし、提出する際も本部の人間にプレゼンした。モデル店舗になると決まって戻ってきた提案書に、自分のできる範囲の計算をし赤字を書き加えた。店頭の売場レイアウト図を作ったのも、彼女のためになるならと思ったら止まらなかったからだ。
(恋心だったのか……)
納得していると、茅野は智田の前にたこわさの鉢を置いた。智田の好物だ。
だが、今はそれに箸をつける気になれない。不動の前でのドジを、思い出してしまうからだ。
彼女の前での初めてのドジ。しかも、盛大な二連発。あんなに恥ずかしいことがあるだろうか。
誰かと馴れ合うよりも、ひとりでいた方が悲しい思いをしなくて済む。幼い日の智田は、誰かと打ち解けるよりも流されるように生きることを望んだ。
そのせいか、ひとりきりでいることに慣れてしまった。茅野のように気さくに話しかけてくれる友人もいたが、それはごく少数だ。自分から友人を作らない智田は、いつの間にか他人との距離の縮め方が分からなくなってしまっていた。
(俺も全国転勤の仕事に就いたし、執着心などないと思っていた。だが、彼女とはこれからも仕事をしたいと思ったんだよな。だからあの提案を――)
彼女に売場改変の提案書を書く指導をし、提出する際も本部の人間にプレゼンした。モデル店舗になると決まって戻ってきた提案書に、自分のできる範囲の計算をし赤字を書き加えた。店頭の売場レイアウト図を作ったのも、彼女のためになるならと思ったら止まらなかったからだ。
(恋心だったのか……)
納得していると、茅野は智田の前にたこわさの鉢を置いた。智田の好物だ。
だが、今はそれに箸をつける気になれない。不動の前でのドジを、思い出してしまうからだ。
彼女の前での初めてのドジ。しかも、盛大な二連発。あんなに恥ずかしいことがあるだろうか。