クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない
 その瞬間、その場の空気が凍てついた。智田SVが、迷惑そうに顔をしかめたのだ。そんな彼の表情に、島崎店長すら顔が引きつっている。
 だが、酔っぱらいの町田店長は空気の変貌ぶりに気づいていないのか、口滑らかに続けた。

「智田SVはまだ三十前半だし、どうです? 島崎店長。かわいいし、気が利くし、ふたりがくっついたらめでたいし!」

 町田店長は豪快に笑う。そんな彼の言葉に、私の胸はざわざわと騒いだ。町田店長の発言を不快に思ったからだと思うが、それだけじゃない気もする。

(あれ、どうして……?)

 町田店長を止めようと思っていたのに、不可解な自分の気持ちに気を取られてしまう。なにもできないでいると、智田SVが顔をしかめたまま口を開いた。

「俺は恋愛に興味はないので。というか町田店長、その発言は下手したらセクハラで訴えられますよ」

 彼はその場でブリザードを放つようだ。
 町田店長ははっと目を見開き固まってしまった。自分の失言に、やっと気づいたようだ。

 智田SVはそれでも淡々と表情を変えない。そんな彼を、思わずじっと見てしまった。
 全員が思っていたことを、淡々と言う。智田SVにとって町田店長は年上だが、上司らしく物怖じしない。そんな彼の態度を、かっこいいと思ったのだ。

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