クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない
 だが同時に、胸を針で刺されたような、ちくりとした痛みが襲う。

(智田SVは、『恋愛に興味はない』のね)

 彼はこの場の空気感を気にしているのかどうかも分からない顔で、ビールを口に運び続ける。その姿は、色恋には一切興味はありません、と物語っているようだ。

 私は思わず俯いた。それで、自分が落ち込んでいることに気づく。

(あれ、私なに落ち込んでるの? まさか、ね)

 一度、ちらりと智田SVを見上げる。先ほどと変わらぬ彼の様子に、今度は胸が甘く跳ねた。

(まさか私、彼と〝恋したい〟って思ってたの⁉)

 突然気づいた、自分の気持ちに戸惑う。だが、すぐに冷静になった。
 戸惑ったところで仕方ない。この気持ちがたとえ恋だとしても、恋愛に興味のない彼が相手なら叶わない。

(この気持ちは、恋に似た別のなにか。憧れとか、そういうの)

 芽生えそうになった恋心を誤魔化すように、彼は私にとって理想の上司なのだと言い聞かせる。

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