クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない
 クールな智田SVの、かわいいドジ。そんなギャップのある〝推し〟として、心の内でこっそり推す。
 彼への気持ちを恋心だと思うよりも、彼との仕事をこれからも円滑に過ごすためにはそのほうがいいだろう。

 私は彼をちらりと見上げ、智田SVの推しカラーは何色だろうと考え始めた。


 やがてバーベキューはお開きになり、帰路につく。家族連れの店長たちは車だし、町田店長は家がこの近くなので彼とはその場で別れた。今は駅までの道を、智田SVと島崎店長と歩いている。

 ふたりは相変わらず、推しカラーの商品について話をしていた。私はそんな彼らの、少し後ろを歩く。

 智田SVに話しかける島崎店長の横顔がキラキラしているのは、大好きな〝あっくん〟の話だから。そう分かっているのに、なんだか気持ちが釈然としない。
 彼が私にしてくれたように、島田店長の案も本部に提案させるのだろうか。

(彼は〝推し〟なのに、なにをもやもやしているの? それに、彼は島崎店長にとっても上司でしょう)

 芽生えそうになる気持ちにそう言い聞かせ、駅舎の階段を上る。その時、ポケットのスマホが震えているのに気づいた。
 店舗は今日も運営中だ。なにかあったのかもしれない。

 立ち止まり、スマホを手に取る。だが、その画面に表示されていたのは、母の名前だった。

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