クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない
 最近、母からの連絡の話題はもっぱらこれだ。恋人がいないかどうかを、探ってくるのだ。

 私が二十代半ばの頃まではそんなことなかったのだが、妹弟たちの大学受験の終わった二年前ほどから、半年に一回程度こんな電話がかかってくるようになった。
 最初は二か月に一回程度だったが、一度母の言葉に黙ってしまってからは母も気を遣っているのか、回数が減った。

「でも、仕事ではいいことあったんだ。大きな仕事を任されて――」
『あら、すごいじゃない』

 母は私の話を皆まで聞かずそう言うと、続けてしゃべりだした。

『仕事が順調なら、次は恋人よ。里咲、もうすぐ三十なのよ? いつまでも若いつもりでいたら、あっという間になにもできなくなっちゃう』

 母の言葉に、私は黙ってしまった。
 恋も仕事も順調で、幸せな家族を持って――という未来予想図に、私は全然辿り着けていない。それを母に言語化されたことで、余計に胸を抉られたような気分になったのだ。

 だが、『放っておいて!』などと強く言い返すことはできない。母は私を心配して、言ってくれているのだから。

 なんて返そう。『いつもありがとう』? それとも、『その通りだよね』?
 考えていると、先に母が口を開いた。

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