クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない
「女性だと色々あるんですよ。子供産んで、お世話してって考えると、けっこうぎりぎりな歳なんです。母も、それを心配しているみたいで」

 彼に言っても仕方ない。そう思うのに勝手に口が動いたのは、彼に意識してもらいたいと思ってしまったからなのだろうか。
 彼を推すと決めたのに。この恋のような気持ちは、勘違いにすぎないのに。

「なるほどな」

 智田SVはそれだけ言うと、黙ってしまう。だが沈黙は一瞬で、すぐにぽつりと呟いた。

「結婚か……」
「智田SVは考えていないんですか? 結婚、とか」

 つい、そう聞いてしまった。
 恋愛に興味はなくとも、結婚は別という人もいる。彼もそういう人だったらと、どこかで期待をしていたのかもしれない。
 すると彼は、なぜか難しい顔をした。

「……今はまだ、考えられないな」

 智田SVの言葉に、内心がっかりしてしまう。彼は恋愛だけでなく、結婚にも興味がないらしい。

(ショックを受けてどうするの。彼は上司で、推しでしょう)

 ちくりと痛んだ胸にそう言い聞かせ、憧れという言葉で自分の気持ちを上書き保存する。
 すると、しばらくして智田SVが口を開いた。

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