クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない
あの意気込みは、一体どこへ行ったのだろう。
私はパーティーの中盤、広い会場内の壁際でひとりシャンパングラスを傾けていた。最初こそ頑張って異性に話しかけてみたものの、気を遣いすぎたのか少し疲れてしまったのだ。
(〝この人!〟って思う男性がいなかったんだよね。そういう男性を、どうやって見つけるかも分からないし)
恋の始まりはどんな感じだっただろう。思い返すも、恋愛経験の少ない私にはあまりピンとこない。
「君、少し話さない?」
突然声を掛けられ、顔を上げる。目の前に、すらっとした背の高い男性が立っていた。
胸が少し跳ねたのは、彼の雰囲気がどことなく智田SVと似ていたからだろうか。
「ええ、ぜひ」
笑みを浮かべそう答えると、彼も優しい笑みを返してくれた。
(彼となら!)
そう思い、彼の話に耳を傾ける。軽く自己紹介をし合うと、彼は東京や神奈川の高級飲食店を三店舗も経営していることを知った。
「お金には困らないと思うよ。僕が経営しているところはどこも高級店と言われるランクだし、ひとつくらい無くなっても痛くも痒くもない」
冗談なのか、彼は笑いながらそう言う。だが、私は彼のその言葉に抵抗感を覚えた。