クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない
「お金には困らないかもしれないですけど、そこで働いている人やそのお店が好きなにとっては、お店が無くなったらショックではないですか?」
「確かに、そうだね」

 彼は冗談に返されたことに驚いたのか、面食らった顔をする。だけどすぐ私の質問に笑ってそう返し、続けた。

「でもね、売上が伸びない店舗は残していてもしょうがない。義理人情で続ける人もいるけれど、そういう人は経営に向かないと思うよ」
「それは確かに、そうですね」

 彼の意見には心が痛むが、もっともである。プレブロは大手アパレルメーカーとして全国に展開しているから潰れることなどまずないが、売上が芳しくない店舗は店長の変更や本部の介入、ひいてはテナント撤退なんて例もある。

「それに、系列店を経営してるからこそ、顧客を別の店に引き込める。それが近隣で似たような店舗を経営するメリットだよ。まあ、うちの店はおかげさまでどこも売上万々歳だから、そろそろ地方にも出店しようと思ってるんだけどね」

 彼はおちゃめに片目をつぶりながらこちらにそう言う。

「なるほど。まずは近場でチェーン店舗化して、地方に出店……」

 彼の話は面白いし為になる。私はいち店長としてしか店舗を見ていなかったから、それ以上の物の見方は初めてだ。

 つい顎に手を当て彼の言葉をくり返す。すると、彼の笑い声が頭上から聞こえてた。
 顔を上げると、彼は苦笑いを浮かべていた。

< 67 / 206 >

この作品をシェア

pagetop