クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない
 最寄り駅に着く頃には、既に日は落ちていた。日曜の駅前に会社員はおらず、家路をのんびりと歩く家族連れやカップルが目に付く。

 私は服装に似合わないため息をこぼしながら、ひとりとぼとぼと家路についた。だけど、真っ直ぐ帰る気になれない。

(ビールとラーメンの気分。でも、この恰好でいつものラーメン屋さんに行くのもな……)

 小洒落たワンピース、セットした髪。これでいつものラーメン屋に行っては、店主もびっくりしてしまうだろう。変に気を遣わせてしまうかもしれない。

 だったら大人しく帰ろうとも思ったが、駅前の道を歩いているとプレブロの看板が目に入った。この辺りは、以前智田SVと待ち合わせをした場所だ。
 それで、思い出した。

(前に、彼に連れて行ってもらったあのお店なら!)

 おしゃれなダイニングバーなら、この恰好でも浮かないだろう。あの日は食べなかったけれど、ラーメンもメニューにあると店主さんが言っていた。
 すっかりラーメンを食べたい口になっていた私は、SOUTH RIVERに向かって歩き出した。

 あの日と同じ、おしゃれな外観。耳を澄ますと中から話し声がいくつか聞こえ、私以外にも客がいることに安堵する。

 扉を開け、店の奥に目を向ける。以前来た時にカウンターがあったのを覚えていたから、今日はそこに座ろうと思ったのだ。

 だが、そこには先客がいた。智田SVだ。
 彼はテーブルに突っ伏して目を瞑り、胸を上下させている。どうやら、寝てしまっているらしい。

 初めて見る彼のそんな姿に目をまたたかせていると、今度はカウンターの内側にいる店主と目が合った。

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