クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない
(恋じゃない、彼は〝推し〟)

 必死に自分に言い聞かせるも、胸の高鳴りはなかなか収まってくれない。
 必死に格闘していると、それまで静かだった運転手さんが不意に口を開いた。

「雨だ。お客さん、傘あります?」

 窓に視線を向ける。雨粒がぽつり、ぽつりと垂れていた。

「ないですけど、これくらいなら大丈夫です。お気遣い、ありがとうございます」

 すると、声が大きかったのか智田SVが目を覚ました。

「あれ、不動店長?」

 その声に、体がぴくりと跳ねてしまう。すると彼は体を起こし、首を傾げる。まだ寝ぼけているのだろうか。
 私はそんな彼を見ながら、平静を装い口を開いた。

「はい、不動です。智田SV、大丈夫ですか? だいぶ酔っていたみたいですけど」
「ああ、平気だ」

 智田SVは言いながら、頭痛がするのか右手で軽く頭を押さえる。その様子は、いつものクールな智田SVのものだった。

< 73 / 206 >

この作品をシェア

pagetop