クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない
「不動……」

 彼の右手が、こちらに伸びてくる。その指の背は私の左頬に触れ、優しくなぞるように滑りおりてゆく。
 彼に触れられたところにしびれるような感覚が走り、心拍のリズムがいっそう速くなった。

(いったい、なにが起きているの?)

 頭は混乱するが、鼓動は次のなにかを期待している。動けずにいると、彼の右手が今度は私の顎をすくった。
 そのまま、くいっと持ち上げられる。私の視線は、甘美な熱のこもる彼の瞳に囚われてしまった。

「嫌だったら逃げてくれ、鍵はかけていない」

 想像もしていなかった甘い雰囲気に、体も心ものみ込まれてしまう。なぜか鼻の奥がつんとして、涙がこぼれそうになる。

「智田、SV……」

 声にならない声でそう言うと、彼の右手が顎からそっと退いた。それでも、私は目を逸らせなかった。逸らしたくなかった。

 じっと彼を見つめる。すると彼の顔が、ゆっくりとこちらに近づいてくる。

「逃げなくていいんだな?」

 腰をかがめてこちらを覗く彼に、私は小さくこくりと頷く。すると、彼の顔はさらに私に近づいた。

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