クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない
『結婚か。……今はまだ、考えられないな』

 なぜここで本音をこぼしてしまったのだろう。だが、言ってしまったものは仕方ない。
 智田は挽回するように不動を褒めたが、それも空回りしてしまう。結果、彼女は価値観が違うと思ったのか丁寧に話を切り上げ、智田に背を向けパーティーへと向かってしまった。

〝俺がいる、俺にしろ〟

 そんな強引な言葉を並べて、彼女の腕を掴めたらどれだけ良かっただろう。
 だが、過去の失敗が自分を臆病にする。

 ドジばかりな自分に、彼女は呆れないだろうか。仮に彼女とお付き合いできたとして、その先の結婚まで辿り着いたとして。その未来でもドジばかりしていたら、いつか愛想を尽かされてしまうのではないだろうか。
 ドジな自分と過ごさなければならない未来に、彼女を引き込むなんてできない。

(彼女は俺じゃない誰かとの方が、幸せになれるのかもしれない)

 不動が幸せならそれでいい。そう思おうとしたが、心は素直に納得してくれなかった。

 誰かに気持ちを聞いてほしくて、茅野の店に向かった。自分の格好悪いところを全部知ってる彼なら、どんな姿を見せてもなにも失わないからだ。
 SOUTH RIVERで好みのクラフトビールを飲みながら、茅野に事の次第を話した。

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