クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない
翌日、重たい気持ちを引きずりながら彼女のいる店舗へ向かった。だが、いつまでもくよくよしているわけにはいかない。
「昨夜は大変失礼な行為をしてしまい、申し訳ございませんでした」
気持ちを切り替え、ミーティングルームに入った際。最初に彼女にそう謝罪をし、頭を下げた。
どんな罰でも受けるつもりだ。そういう気概でいたが、彼女はいつも通り冷静でかつ優しかった。
「いえ、こちらこそ失礼いたしました。お酒が抜けていなかったんですよね。流されてしまった私も私ですし、あの件については私も忘れます」
彼女の言葉の中に複雑な感情を感じ、ぐっと喉に力を入れた。
不快な思いをしたはずなのに、水に流そうとしてくれる。そんな彼女に、申し訳なさが大きくなってこみ上げてきたのだ。
「もし今後、仕事がやりにくいと思ったら遠慮なく言って欲しい。俺に言いにくかったら、エリアマネージャーでも、他店の店長でも、本部の人間でも構わない」
必死になって、用意してきた言葉を並べる。だが不動の気持ちを考えたら、彼女にそんなことはできないだろうと思った。
自分は上司で、彼女は部下。しかも、彼女は店長という立場である。店を支えるという大きな役割を持つ彼女が、私事で仕事の人事を変えたいと言えるかというと、微妙なところだ。
「自分でしでかしておいて言うのもなんだが、不動店長が働きにくい環境になってしまうのは本望でないんだ。SVと店長という立場だから、ふたりで話さなければならないことも多いだろう。なんなら、俺から異動を願い出て――」