滾る恋情の檻



———そして、新歓シーズン。


サークルの勧誘を受けながら、校内を歩いていると、ふと目の前に見覚えのある姿があり、胸を締め付けられた。


(……あ)

 
――結城遥。


高校時代の面影を残しつつも、少し伸びた髪は柔らかく茶色に染まり、緩いパーマが彼の雰囲気をさらに柔らかくしている。


シンプルな服装なのに、長身ですらっとした体格の良さが自然と人目を引いていた。


(先輩、だ……)


「っ」


ずっとずっと、待ち焦がれていた瞬間なのに、実際に先輩を目の前にすると、息が詰まって呼吸の仕方を忘れた。


――その瞬間、遥がこちらを向いた。


目が合い、彼の表情に驚きが走る。

 
「……え…?もしかして……美子ちゃん…?」


息を呑むほど低く優しい声。


たったそれだけで、胸の奥がぎゅっと掴まれる。


時間なんて一瞬で巻き戻ってしまったかのように、呼吸が、苦しい。


「……お久しぶりです」


やっとの思いで言葉を絞り出す。


遥は目を細め、柔らかく笑った。


「やっぱり……美子ちゃんだ。すごいな、最初見たとき、めっちゃ可愛い子いるって思った。ここ受験してたんだ?」


その笑顔が自分に向けられている現実に、美子は、喜びで全身が震えそうになった。


遥は、変わっていなかった。


あの優しい笑顔も、声の温もりも、そのままだ。


でも、美子の方は変わっていた。


髪も染めたし、服装も大人びた――なにより、男を知って、もうあの頃のなにも知らない可愛らしい純粋だった美子ではない。
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