滾る恋情の檻
「…っ」
言葉が出ない。思わず息を飲み、胸の高鳴りを抑えようとするけれど、無理だった。
「髪…染めたんだ。すごく大人っぽくなったね」
その一言だけで、胸の奥がざわつく。
嬉しいような、苦しいような――複雑な感情が入り混じる。
心の中で、あのリビングでのキスの余韻が一瞬でよみがえる。
――あの時の先輩に触れた感覚、胸が締め付けられた感覚。
どれだけ時間が経っても、あの感覚は美子の心の奥にしっかりと残っていた。
「…先輩は、サークルの勧誘ですか?」
自然に口を開いたその言葉に、先輩はにっこりと笑った。
「うん、そう。あっ、よかったら美子ちゃんも新歓こない?」
その何気ない一言が、胸を暴力的に高鳴らせる。
笑顔ひとつ、声ひとつで、こんなにも簡単に心を乱される。
(やっぱり、先輩は私にとって、特別なんだ……)
高校時代、忘れようとしても忘れられなかったあの気持ちが、一瞬で蘇る。
美子は、少しだけ震える手をぎゅっと握りしめ頷いた。