滾る恋情の檻
その時、
「ねえねえ、遥くん、その子と知り合いなの? 地元一緒みたいだけど」
艶っぽい声が飛んできて、思わず視線を向ける。
振り返れば、綺麗な先輩たちがビールの入ったグラスを片手に立っていた。
「うん。友達の妹で、高校の後輩」
遥は変わらぬ調子で、穏やかに答える。
「えー! そうなんだ、びっくり」
「へえ、妹ちゃんかぁ。かわいいね」
微笑みながらも、どこか探るような視線がこちらに注がれる。
(わざと……妹って言葉を強調してる……)
女同士だからこそ分かる――これは牽制だ。
(この先輩たち……結城先輩に気があるんだ)
即座に気づいて、私は曖昧に笑ってごまかした。
遥は他の席から声をかけられ、「ごめん、ちょっと行ってくる」と自然にその場を離れてしまう。
それと同じタイミングで、女の先輩達も興味をなくしたように散っていった。
残された私は、なんとなく気まずくてグラスを持ち上げ、口をつける。
胸の奥が落ち着かなくて、耐えきれずに「お手洗い行ってきます」と小さく告げて席を立った。