滾る恋情の檻

無防

新歓もお開きになり、居酒屋のざわめきも少し落ち着いた。


(よし……帰ろう……)


胸の奥がまだドキドキして、気持ちが落ち着かないまま、私は立ち上がる。


楽しかったけれど、情報量が多すぎて、頭の中がぐるぐるしていた。


「あっ!!美子ちゃん!帰るの?俺が帰り送るよ」


隣のテーブルから、2年生の男の先輩の声。


笑顔で差し出された手に、思わず戸惑う。


「え、あ、でも……」


「女の子ひとりで帰るの危ないよ!」


 先輩は有無を言わせぬようにこやかに肩をすくめ、ぐっと近づいてくる。


(先輩だし、断るのも失礼かな…)


と頷きかけたその瞬間――


「――俺が送ってく」


低く落ち着いた声が割り込んできた。


振り返ると、遥が自然に立っていて、私の前にすっと割り込む。


「えっ、結城先輩……?」


驚きと安堵が入り混じり、思わず声が震える。


男の先輩は一瞬戸惑い、微笑みながら後ずさる。


「あ……了解です…」


その返事に、遥はにこりと笑い、小さくうなずいた。


(……え、先輩、なんで……)


一瞬、嬉しさが込み上げたがすぐに、先輩は兄の友人で、私のことを放っておけないだけなんだろうなと、気持ちを沈めた。


 けれど、その自然な振る舞いに、胸は高鳴りっぱなしだった。
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