滾る恋情の檻
居酒屋の外に出ると、タクシーを呼んで待っていてくれた遥。
「乗ろうか」
差し出された手に、そっと触れるだけで、心臓が飛び出そうになる。照れくささとドキドキを押さえながら、車内に乗り込む。
タクシーが静かに走り出すと、車内の穏やかな空気に、胸の鼓動だけがやけに大きく響いた。
窓の外を街灯が流れ、遥の横顔が淡く光を受ける。
高校生の頃は、ただ優しくてかっこいい人だと思っていた遥。
でも今――落ち着きと柔らかさを纏った大人の彼に、心臓が締めつけられるほど胸が高鳴る。
「今日、来てくれてありがとう」
横顔に浮かぶ笑みは、昔より少しだけ大人っぽくて、けれど柔らかい。
「いえ……こちらこそ。楽しかったです……」
声が小さく震える。近くにいるだけで、胸の奥が熱くなる。
「美子ちゃんが、S大入ってくれて、嬉しかった」
その言葉に、心の奥がじんわり温かくなる。
努力してきた日々が、一気に報われたような気がした。
窓の外。街灯が流れるたび、先ほどのグラスやテーブルの光景を思い出し、胸の奥がざわつく。
「着いたよ」
タクシーが停まると、現実に引き戻された。
「ありがとうございます……」
お礼を言いうと、「ちゃんと部屋まで送るよ」と先輩は言ってくれて、一緒に部屋の前まで歩いた。
隣に感じる先輩の存在に、玄関の鍵を探す手が少し震える。
そして――鍵を回そうとした瞬間、低くまっすぐな声が耳に届いた。
「ねぇ、美子ちゃん」
「……?」
「……ちょっとだけ、上がってもいい?」
驚いて隣を見上げると、真っ直ぐ見つめる瞳に、心臓が跳ね上がる。
「え、あ……はい……」
表向きは冷静に返事をしたけれど、胸の奥は嵐のようにざわめいていた。
自然に招き入れる形で玄関のドアを開けると、先輩はフワッと笑って「お邪魔します」と足を踏み入れた。
(私の家に……先輩が……)
美子の全身は喜びと緊張で溢れていた。
だが、美子は気づかなかった。
遥の瞳の奥に、鋭くが光っていることに――。