滾る恋情の檻
激情
美子も、遥に続いて玄関に足を踏み入れ、照明をつける。
「スリッパあるので、使ってくださ……っ」
――そう美子が言い終わる前に、遥の手がすっと美子の腕をつかむ。
「……!」
驚く間もなく、自然な流れのように――しかし確かに力強く、美子の背は壁に押し付けられていた。
閉まったドアの音が、やけに大きく響く。
息が詰まり、体の自由が奪われ、心臓が跳ね上がる。
(え……?)
意識が追いつくよりも早く
――唇が塞がれた。
それは高校生の頃に交わした、冗談めいた軽い口づけではなかった。
大人の、深くて熱いキス。
遥の唇が熱を宿し、舌先が絡め取るように侵入してくる。
「……んっ……ぁ……」
玄関に、湿った音が微かに響いた。
手首は強く押さえられ、びくともしない。
理性が追いつかないまま、胸の奥がざわつき、頭の中が真っ白になっていく。
(わたし……先輩と……キス、してる……?)
夢みたいで、でも抗いようのない現実。
全身が熱く震え、唇が離れたときには、すでに息が乱れていた。
「は……ぁ……な、なんで……」
声が震える。戸惑いと高鳴りがないまぜになり、言葉にならない。
遥はそんな美子を見つめ、ゾクリとするほど綺麗な笑みを浮かべた。
「美子ちゃんさ……警戒心なさすぎる」
「え……?」
「さっき、あいつが“送ろうか”って言ったとき。俺が声かけなかったら、頷こうとしてただろ」
「っ」
図星を突かれ、美子は言葉を失う。
遥の笑みはさらに深まった。けれどそれは、高校の頃に見せていた柔らかなものではなく、冷たく背筋を粟立たせるような笑みだった。