滾る恋情の檻
「……ねぇ」


低い声と共に、布が払われ、遥の指が敏感な奥へと容赦なく侵入する。


「んっ……やぁ……っ」  



甘い声がこぼれた瞬間、脳裏に焼きついた記憶が甦る。


――あの時。


リビングのテーブルで、ノートを広げていた自分に、


『ここ、答え違うかも』



そう言って、遥が指先でノートをつついたあの日。


長い指、すらりとした関節。


紙を軽く押さえただけなのに、どうしようもなく綺麗だと思ってしまった。


ずっと見ていた、憧れの手。



(……先輩のあの綺麗な指が……いま、私の中に……)


胸の奥で熱いものが弾け、現実感が揺らぐ。


あの頃はただ遠くから見ていた存在が、今は抗えないほど深く入り込んでいる事実に、 

身体の奥が疼き、濡れた場所は容易に指を受け入れてしまった。


「やっぱり……もう経験してるんだ」


温度の下がる、冷たさを含んだ言葉に、美子ははっと目を見開く。


「……っ」


その揺らぎを見逃さず、遥は冷笑を浮かべた。


「こんなことになるくらいなら……あんなキスだけじゃなくて、最初から全部、奪えばよかった」


ゾクリと背筋を走る声。


ずっと無かったことにされていたと思っていたキス。私の心と身体に深く刻まれた先輩の余韻。


あれを、先輩も覚えていたなんて。


喜びで身体が熱くなる。


その指先で肌を撫でられるたび、胸の奥が疼き、心臓が破裂しそうに跳ねる。


そのあと、流れるように、服を脱がされた。


「……っ、や……っ」


美子は恥ずかしさに顔を覆おうとした。


けれど、その手首をすぐにとられ、頭上に押さえ込まれる。


絡め取るように指が重なり、逃げ場を封じられる。


遥の視線がゆっくりと美子の全身をなぞり、低い声が落ちてきた。


「ねぇ、美子ちゃん……何人の男に触らせた? 何人に、この身体をみせた?」


冷たく光る瞳に射すくめられ、美子は息を呑む。


「……っ……」


言葉にならず、ただ縮こまるしかない。


「俺はもう……美子ちゃん以外いらないのに。俺の知らないところで、知らない美子ちゃんが他の男と交わってたなんて……ほんと、気が狂いそう」


その告白に、胸が締め付けられる。


こわいほど重く、けれど――切実で。


遥の強すぎる独占欲が、美子の心も身体も支配していった。
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