滾る恋情の檻
高校時代、美子は誰とも付き合ったことがなく、恥ずかしそうに赤くなりながら、遥にだけ熱を宿した目を向けていた。
一度のキスで、その熱はさらに強くなった。
美子の視線が絡みつくように変わっていくのを、遥ははっきりと感じていた。
それに気づきながら、あえて何事もないふうに接した。
普段通りに話し、普段通りに隣にいる。
――そうすることで、美子の視線はますます執着を帯び、強くなっていった。
「美子はずっと俺のことが好きなんだ」
疑いようもなく、遥はそう信じていた。
その視線を浴びるたびに、優越感にも似た快感が全身に沁みわたった。
だが、大学に入ってから、その確信はあっさり砕かれる。
久しぶりに会った拓也との何気ない会話の中で耳にした“美子に彼氏が出来た”という情報。
さらにSNSを追えば、知らない男の影を匂わせる投稿。
彼女の友人の投稿には、楽しそうに笑う美子の顔。見たことのない笑顔を、隣に座る男に向けている。
(……美子が……俺以外の男と……)
頭の中が真っ白になった。
キスした時は、無垢な女の子だったのに。
俺以外にあの子に触れた男がいるかもしれない。
そう思った瞬間、吐き気が込み上げた。
喉の奥で煮えたぎるのは、嫉妬と憎悪。
自分の知らない顔を、誰かに見せている。
それが許せなかった。