滾る恋情の檻
もう、他の女に触れる気にはなれなかった。


高校の頃に付き合っていた彼女は、卒業と同時にあっさり切った。


抱きしめようとしても、キスをしようとしても、頭に浮かぶのは美子だけ。


他の女の肌は、ただ気持ち悪いとしか思えなかった。


告白されることは何度もあった。
けれど、誰とも付き合わなかった。


必要なのは、美子ひとり。


――そして、遥は知っていた。


美子が必死に勉強していること。
S大を目指していること。


つまり、自分のそばに来ようとしている事実を。


SNSを通して、美子の頑張りも、もがきも、全部見てきた。


そのたびに、心の奥で囁く声が強くなる。


(結局、彼女は今も俺に執着してくれている)


彼女が何度も男と付き合っては別れてを繰り返し、長続きしないことも把握済み。


――どんな男と付き合おうが、最終的に辿り着くのは俺。


その確信だけが、嫉妬と憎悪に飲み込まれそうな心を繋ぎ止めていた。


だからこそ――待っていた。


S大に入ってくるのを。


俺のそばに戻ってくるのを。


その日が来たら、二度と離さない。


絶対に俺のものにする。


画面に映るSNSには「大学に合格した」の文字。
その投稿に添えられた美子の笑顔を見つめながら、遥は静かに呟いた。


「……もうすぐだ」


胸の奥底で燃える執着は、誰にも気づかれないまま、日に日に膨れ上がっていった。
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