滾る恋情の檻
春。
新入生が一斉にキャンパスに集まるこの季節、校門前や広場は勧誘のビラを配る学生で賑やかだった。
俺も例に漏れず、所属しているサークルの新歓に顔を出していた。
――ふと。
視界の中に、待ち焦がれたシルエットが飛び込んできた。
(……あ)
思わず息を止める。
淡い茶色に染めた髪。流行りの服を着こなした、大人びた雰囲気。SNSで何度も見たはずなのに、実物は次元が違った。
けれど、歩く仕草や伏せがちな瞳の落とし方は、昔と変わらない。
けれど、歩く仕草や伏せがちな瞳の下り方は、あの頃のままだった。
息が詰まる。
視線がぶつかる。
「……え…?もしかして……美子ちゃん…?」
わざと、驚いたような声をだした。
胸の奥が、強く疼いた。
彼女は一瞬ためらったあと、小さく頷いた。
「……お久しぶりです」
少し緊張で震える声。俺の心を掴んで離さないその声を聞いた途端、胸の奥に溢れる感情を制御するので大変だった。
「やっぱり……美子ちゃんだ。すごいな、最初見たとき、めっちゃ可愛い子いるって思った。ここ受験してたんだ?」
――全部知っているくせに、知らないふりをして笑いかける。
そのとき、美子はあの頃と同じ表情を見せた。
驚きと戸惑い。その奥に潜む、俺を向いている熱。
それだけで、まだ自分への気持ちが残っていると確信できた。
「先輩は、サークルの勧誘ですか?」
ぎこちなく口にするその仕草すら、愛おしい。
「うん、そう。あっ、よかったら美子ちゃんも新歓こない?」
軽く誘うふりをしながら、心の奥では渦を巻いていた。
――逃がす気なんて、毛頭ない。