滾る恋情の檻
その時、横から声が飛んだ。


「えっ!?遥、誰この子!?めちゃくちゃ可愛いじゃん!知り合い!?」


俺の友人だった。


余計なことを……と思いつつも、自然に答える。


「高校の後輩。俺の友達の妹なんだ」

「はぁ!?友達の妹!?――なんでこんな美人を隠してたんだよ!」


そして、そのあと、大げさに騒ぐ友人に向けて浮かべた美子の笑顔――


それは無垢なあの頃の笑顔ではなかった。
柔らかく、自然で、けれどどこか妖艶さを纏っていた。


髪の毛の揺れ、伏せた瞳、口角にかすかに残る色気――


その一つひとつが、男を惹きつけてやまない。


彼女がそれを自覚しているのかどうか――そんなことはどうでもいい。


(……っ、なんだこれ)


胸の奥で、熱がじわりと広がる。


――無意識で、あの笑顔が俺以外の誰かを誘惑している。


その事実に、俺はたまらなく嫉妬した。
 
(あー……)

(……早く、二人きりになりたい)
 
(触れたい。キスしたい。抱きたい……)

一気に、その欲望が、俺の思考を支配した。
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