やっぱり君が好きだ

それでもやっぱり君が好きだ

 修学旅行から一ヶ月が経った私たちは今日、受験に向けて教室で勉強していた。
 教室には珍しく私たち2人以外はいなかった。
「そういえば陽人君ってどこ受験する予定なの?」
 そう私が聞くと陽人君は少し真剣な顔をした。
「実は花凛に話してないことがあってさ。」
「えっ、うん。何?」
 なんだか嫌な胸騒ぎがした。
「実は僕余命宣告されててさ。高校に進学する前にもう死ぬかもしれない。」
 思ってもいなかった告白に言葉が出なかった。
「ごめんね。急にこんなこと言って。実は心臓に疾患があって!それでこれまで何回も転校して。」
 私は始業式の日、少し耳に挟んだ話を思い出した。あの話は本当だったんだ。私は黙って話を聞いた。
「もうどうやっても治らないみたい。それで明日から入院するんだ。」
 私の堪えていた涙はついに流れた。
「やだよ、やだよ。なんで...。」
 声が震え、嗚咽を漏らしながら私は涙を流した。涙が頬を伝って落ちてくる、けど止まらない。私は現実を受け入れたくない。どうすることもできない私はただ泣くことしかできなかった。
 前から陽人君が優しく私を抱けしめた。
「僕だって病気なんかならずにずっと花凛と一緒にいたいよ。」
 少し鼻をすすりながら陽人君はそう言った。分かってる。一番辛いのは陽人君や陽人君のお父さんやお母さんだって。でも...私だって辛いよ。
 私も陽人君を抱きしめ返した。
 長い時間が経った。私は涙を手で拭いながら陽人君を見た。
「私さ、陽人君と出会って初めてほんとに好きって思える人ができたの。だからさ私と残りの時間、少しでも一緒に過ごしてくれない?」
 すこしでも笑顔を、と思い柔らかい笑顔で聞いた。
「うん。いっぱい病院来て下さい。」
 お互いに微笑みあった。
「じゃあこんなことしてる場合じゃないね。さあ早く帰ろ。」
 うん、と陽人君が言った。私にはなにができるんだろう、少しでも陽人君のためになることをしたい。
 学校からの帰り道。もしかしたら陽人君にとっては最後なのかもしれない。そんなことを考えていると胸が痛くなる。
 たわいもない話をしながら私たちは家に帰った。

 次の日、いつも通り学校に行くと陽人君は来ていなかった。
「永谷君は病気で入院することになりました。」
 HRで先生はそれ以外何も言わなかった。

「ねえ、花凛。陽人君入院したってしってたの?」
 菜々が少し不安そうな顔をしていた。
「うん。昨日聞いた。」
「そうだったんだ。大丈夫かな。」
 昨日言ってた話はまだ話して良いか分からず、とりあえず黙ってることにした。
「多分大丈夫だと思うよ。」 
 そうだよね、と言い話題が変わった。
 授業中、私は陽人君のことが心配であまり授業に集中できなかった。
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