第三作★血文字の輪廻★
③ 第二部 ― 感染と再生
黒田は相沢の手帳を押収し、庁内の鑑識に回した。
だがその翌朝、鑑識担当者が自宅で自殺したとの報せが届いた。
壁には、赤黒い文字でこう残されていた。
「こたえは すぐそこ」
遺族によれば、彼は前夜「耳もとで声がする」と怯えていたという。
黒田は歯噛みした。
――やはり、読むことで感染するのか。
警視庁内部でも、相沢の記事コピーを扱った職員が次々に体調不良を訴えた。
「夜中に囁かれた」
「壁に赤い染みが浮かぶ」
「記事の文字が滲んで見える」
症状は共通していた。
やがて一人の若手刑事が、会議室で突然発狂した。
自分の腕に爪を突き立て、血で机に文字を描き始めたのだ。
同僚が止める間もなく、彼の口からは抑揚のない声が漏れた。
「ほんとうのはんにんは……」
そして、その場に崩れ落ちた。
黒田は、ぞっとするような真理に気づき始めていた。
血文字は“残響”として記録に刻まれ、
読む者に“囁き”を植えつけ、
囁かれた者は新たに“血文字”を生む。
――それは呪いではなく、自己再生する仕組みだった。
相沢が残した記事も、手帳も、その一部に過ぎない。
血文字は媒体を変え、記録を喰らいながら、次代へと受け継がれていく。
黒田の耳元で、不意に囁きが走った。
「つぎは おまえのばん」
振り返っても誰もいない。
だが、手帳を閉じたはずの机の上で、勝手にページがめくられていく。
最後の白紙だったはずのページに、赤黒い線がにじみ出した。
「はじまりに もどれ」
黒田は震えた。
血文字は“輪廻”を求めている。
過去の犠牲者の声が、再び新しい犠牲者を生み出すために。
黒田は相沢の手帳を押収し、庁内の鑑識に回した。
だがその翌朝、鑑識担当者が自宅で自殺したとの報せが届いた。
壁には、赤黒い文字でこう残されていた。
「こたえは すぐそこ」
遺族によれば、彼は前夜「耳もとで声がする」と怯えていたという。
黒田は歯噛みした。
――やはり、読むことで感染するのか。
警視庁内部でも、相沢の記事コピーを扱った職員が次々に体調不良を訴えた。
「夜中に囁かれた」
「壁に赤い染みが浮かぶ」
「記事の文字が滲んで見える」
症状は共通していた。
やがて一人の若手刑事が、会議室で突然発狂した。
自分の腕に爪を突き立て、血で机に文字を描き始めたのだ。
同僚が止める間もなく、彼の口からは抑揚のない声が漏れた。
「ほんとうのはんにんは……」
そして、その場に崩れ落ちた。
黒田は、ぞっとするような真理に気づき始めていた。
血文字は“残響”として記録に刻まれ、
読む者に“囁き”を植えつけ、
囁かれた者は新たに“血文字”を生む。
――それは呪いではなく、自己再生する仕組みだった。
相沢が残した記事も、手帳も、その一部に過ぎない。
血文字は媒体を変え、記録を喰らいながら、次代へと受け継がれていく。
黒田の耳元で、不意に囁きが走った。
「つぎは おまえのばん」
振り返っても誰もいない。
だが、手帳を閉じたはずの机の上で、勝手にページがめくられていく。
最後の白紙だったはずのページに、赤黒い線がにじみ出した。
「はじまりに もどれ」
黒田は震えた。
血文字は“輪廻”を求めている。
過去の犠牲者の声が、再び新しい犠牲者を生み出すために。